婦人科治療法
子宮筋腫、子宮腺筋症
手術療法
手術で子宮を摘出する、筋腫を摘出する(子宮は残す)、子宮腺筋症の部位を摘出する方法です。手術を選ぶか、他の治療を選ぶかは、症状の強弱、年齢、挙児希望の有無などを考慮して決めます。子宮筋腫を核出して子宮を残す手術は一般的ですが、子宮腺筋症に対して、子宮腺筋症の部位だけを摘出して子宮を残す手術は一般的ではありませんし、手術後の妊娠では子宮破裂などの危険が高くなります。
子宮鏡下手術
子宮鏡という内視鏡で子宮内を観察しながら粘膜下の子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどを切除する手術です。特殊な手術なのでどこの病院でも可能、という訳ではありません。当院からは静岡厚生病院に紹介することが多いです。
子宮動脈塞栓術
子宮筋腫、子宮腺筋症があり、症状(過多月経、月経痛)がひどいが手術を希望しない、手術が不適である、子宮を温存したい方に向いています。レントゲン透視下で、血管造影を行い、病巣を栄養する動脈(通常は子宮動脈です)を特殊な物質を用いて塞いでしまう治療法です。静岡県中部地域では、藤枝市立総合病院IVR(interventional radiology, 画像下治療)科が唯一の施設ですので、希望があれば紹介状を書き当院から受診の予約を取ります。
OC 経口避妊薬
OC (oral contraceptives)経口避妊薬/LEP (low dose estrogen and progestin)(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)
OCは元々避妊目的で用いられてきた薬剤です。OCには避妊作用以外に、月経痛を緩和する、月経量が減る、月経周期が一定になる、月経前の症状(月経前症候群)も緩和する、ニキビの治療に有効、などがあるので、避妊以外の治療目的に開発されたのが所謂LEPと呼ばれる薬剤です。OC, LEPとも毎日ほぼ同じ時刻に内服する必要があります。又、最大の副作用として、血栓症(静脈血栓症、心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症など)が挙げられ、その為、喫煙者(35歳以上で1日15本以上の喫煙)、40歳以上(40歳以上は慎重投与、45歳以上は原則禁忌)、前兆を伴う偏頭痛のある方は禁忌となっています。又肥満の方も慎重投与とあり、重度肥満の方には処方しません。
子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナMirena)
ミレーナ52mgは、黄体ホルモンを子宮の中に持続的に放出する子宮内システム(IUS: Intrauterine System)です。低用量経口避妊薬(OC)の避妊効果と、子宮内避妊用具(IUD)の長期の避妊が可能であるという特徴を持っています。また、過多月経+月経困難症の治療薬として国内外のガイドラインですすめられています。現在では世界約130カ国で、延べ約3,900万人の女性が使用しています。(バイエル薬品ホームページから引用)
似たようなものが従来の所謂避妊リング (FD-1、銅付加IUDなど)ですが、避妊リングを挿入すると、月経量はかえって増加することがあるので、避妊リングの使用はめっきり減りました。
バイエルベターライフナビから引用:https://betterl.bayer.jp/whc/mirena/mirena
GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト
どちらも最終的には性腺(女性は卵巣、男性は精巣)を刺激するゴナドトロピン(性腺刺激ホルモンgonadotropin)を減らして性腺の働きを低下させ、女性なら卵巣から分泌される女性ホルモン(Estrogen)男性なら精巣から分泌される男性ホルモンを減らす薬剤で、女性の場合は無月経になります。
GnRHアゴニストの注射薬(リュープリン)は、男性では男性ホルモンを減少させるので、前立腺癌の治療薬として使用されています。
GnRHアンタゴニストは比較的新しい薬です(商品名はレルミナ、内服薬)ので、薬価(値段)が高めですが、内服すると速やかに女性ホルモン値を低下させ無月経になります。リュープリンもレルミナも使用期間は最大6ヶ月です。
ジェノゲスト
ジェノゲスト(dienogest)、商品名ディナゲスト、ジェノゲスト「モチダ」
黄体ホルモン製剤です。OC/LEPは、血栓症の副作用があるので40歳以上の方には使用困難ですが、この薬は黄体ホルモンのみで、血栓症の危険を高めるエストロゲンを含まないので、年齢が高い方にも使えます。内服していると無月経になります。
ダナゾール
ダナゾール(danazol)、商品名ボンゾール
男性ホルモンテストステロン誘導体です。LEPやGnRHアンタゴニストがまだ発売される前の昭和60年頃は盛んに使われましたが、今では殆ど使用されていません。男性ホルモン製剤なので、女性ホルモンで悪化する疾患(子宮内膜症と乳腺症)が適応として認められています。男性ホルモン作用で太るので患者さんの人気はありませんでした。
子宮内膜症
子宮筋腫、子宮腺筋症と同様に、子宮内膜症は女性ホルモン(Estrogen)依存ですので、治療にも共通する点が多くあります。治療は図に示した様に、ごく軽度の場合は鎮痛剤や漢方薬で症状を和らげることがありますが、これは病変を治すのではなく、症状を緩和するだけなので、出来たら早めに治療をした方が良いと考えられます。
OC/LEP, ジェノゲスト、GnRH agonist, GnRH antagonist, ダナゾールは上記子宮筋腫と子宮腺筋症の治療参照。
手術療法 子宮内膜症性卵巣嚢胞が大きい、癌が疑われる、将来の妊娠を希望されない方、40代後半以降の方では、手術で病巣を除けば症状は軽快または消失します。但し、子宮卵巣を残す(温存する)場合は、手術後に再発することが少なくないので、LEPやジェノゲスト内服を閉経前後まで(妊娠希望する時まで)続けます。
富士製薬工業株式会社パンフレットから引用
富士製薬工業株式会社パンフレット一部改変
子宮筋腫、子宮腺筋症と同様に、子宮内膜症は女性ホルモン(Estrogen)依存ですので、治療にも共通する点が多くあります。
治療は図に示した様に、ごく軽度の場合は鎮痛剤や漢方薬で症状を和らげることがありますが、これは病変を治すのではなく、症状を緩和するだけなので、出来たら早めに治療をした方が良いと考えられます。
OC/LEP, ジェノゲスト、GnRH agonist, GnRH antagonist, ダナゾールは上記子宮筋腫と子宮腺筋症の治療参照。
手術療法
子宮内膜症性卵巣嚢胞が大きい、癌が疑われる、将来の妊娠を希望されない方、40代後半以降の方では、手術で病巣を除けば症状は軽快または消失します。但し、子宮卵巣を残す(温存する)場合は、手術後に再発することが少なくないので、LEPやジェノゲスト内服を閉経前後まで(妊娠希望する時まで)続けます。
更年期障害
薬物療法としては、漢方療法とホルモン補充療法に大別されます。
漢方療法
更年期障害の漢方療法として選択される漢方には幾つかあります。訴えの強い症状、一番困る症状にと本人の体質に合わせて処方を決めます。
ホルモン補充療法
更年期障害とは、女性ホルモンエストロゲンの低下による心身の適応障害と考え、減少した女性ホルモンを補う、という治療です。故にまだ女性ホルモンが十分卵巣から分泌されている方に処方しても効果はありません(ただし偽薬効果と言って、この薬は貴女に効きますよと言って処方すると例え本当の薬でなくても(偽薬)或る程度有効です)。女性ホルモンエストロゲンが分泌されているか否かは経膣超音波で子宮内膜の厚さ、卵巣の卵胞の有無などからも推測可能です。数値で示したい場合は、採血でホルモン値を測定します。
現在当院で使用している主要な薬剤は
エストロゲン(E)として
ジュリナ(内服薬)エストラーナテープ(貼り薬、2日に1回貼り替え)
ル・エストロジェル(両腕に塗る)
黄体ホルモン(P)として エフメノ(内服薬)
(更年期障害に対して黄体ホルモン製剤を単独で用いることはありません)
E+Pとして ウェールナラ(内服薬)メノエイドコンビパッチ(貼り薬、週2回貼り替え)又は上記ジュリナ+エフメノ
ワクチン HPVワクチン
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婦人科癌の治療 子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌
当院では癌の治療はしませんので、簡単に説明します。
当院を受診して婦人科の癌の疑いのある場合は、主に静岡市内の病院(静岡市立静岡病院、静岡済生会総合病院、静岡県立総合病院、静岡赤十字病院、静岡厚生病院)や、希望によっては静岡県立がんセンターを紹介します。
静岡市内の病院では、婦人科癌の治療は、静岡県立総合病院が最多の患者数を誇っています。癌の治療には、手術療法、放射線療法、化学療法(薬を用いる)、免疫療法などがあり、その人の癌の種類、広がり方、体力と年齢(手術に耐えられるかなど)、若い人の場合は将来妊娠を希望するか否か、を考慮して方針を決めます。